労働相談20:能力不足を理由とした解雇1
Q 能力不足の従業員がいます。上司や同じ部署の従業員がフォローしなければならず,かえって周囲の負担が増えている状況です。会社としては,能力不足なので辞めて欲しいのですが,解雇してしまって良いでしょうか。解雇する場合の注意点についても,簡単に教えて下さい。
A 能力不足を理由とした解雇の種類としては,普通解雇と懲戒解雇が考えられます。
このうち,能力不足自体は懲戒事由として就業規則に規定されていない会社が多く,この場合は単に能力不足が判明したということのみでは,懲戒解雇できないこととなります。
一方で,能力不足を普通解雇事由として就業規則上規定している会社は多いかと思います。
そのため,ご質問者様の会社の就業規則において,普通解雇事由として能力不足が規定されており,懲戒事由としては規定されていない前提で,ご回答します。
普通解雇事由として能力不足が規定されているとしても,解雇が有効と認められるためには合理性と社会的相当性が必要という制約があります(解雇権濫用法理)。そのため,後に解雇の効力を争われた場合に有効になる場合は,限定されているといえます。
具体的には,指導・注意をしたにもかかわらず改善がみられないという事実が必要となります。
しかも,万が一訴訟で解雇の効力を争われた場合には,会社の側で「指導・注意をしたにもかかわらず改善がみられない事実」を主張・立証することとなります。
そのため,能力不足の具体的事実(本来求められている能力と,当外社員の能力の程度・内容),注意・指導を行った具体的事実(いつ,どのように行い,その結果はどうであったか)を,その都度記録しておくことが必要です。
例えば,口頭で注意や指導を行っても改善されない場合には,業務改善指示書などの書面で,能力不足の状態と具体的な改善の程度を従業員に伝えることで,注意・指導内容を明確にし,合わせて記録を残しておくということが有用になります。
「労働相談20:能力不足を理由とした解雇1」の関連記事はこちら
- 労務問題の知識
- 解雇・雇止め
- 残業代対応
- 団体交渉・労組対策
- 労働審判
- 労働訴訟
- 女性労働者の雇用
- 高齢労働者の雇用に関する注意点
- 外国人の雇用について
- 「ハマキョウレックス事件」と「長澤運輸事件」の最高裁判決について
- 広島県における労働関係訴訟等の件数
- 労働相談1:試用期間中の能力不足判明
- 労働相談2:従業員が業務上の必要がないのに,勝手に残業しています
- 労働相談3:復職可能という主治医の診断書が提出されたら復職を認めないといけないでしょうか
- 労働相談4:パワハラの基準について教えてください
- 労働相談5:どのような行為がセクハラになるのか教えてください
- 労働相談6:インフルエンザに感染した従業員に対する自宅待機命令
- 労働相談7:遅刻や欠勤が多い社員への対応
- 労働相談8:使い込みへの対応
- 労働相談9:始末書を提出しない従業員への対応
- 労働相談10:退職勧奨を行う場合の注意点
- 労働相談11:休日の試験受験は労働時間か
- 労働相談12:社員旅行積立金への対応
- 労働相談13:減給処分の具体例
- 労働相談14:SNSトラブル対応
- 労働相談15:副業・兼業について・パート1
- 労働相談16:副業・兼業について・パート2
- 労働相談17:会社のホームページ作成
- 労働相談18:「解雇」の種類について
- 労働相談19:不倫をしている従業員への対応
- 労働相談20:能力不足を理由とした解雇1
- 労働相談21:能力不足を理由とした解雇2
- 労働相談22:契約書チェック1
- 労働相談23:契約書チェック2
- 労働相談24:訴状が届いたら