労働相談19:不倫をしている従業員への対応
Q 従業員が不倫をしているという噂が当社内であります。相手は誰なのかなど詳しい状況は分からないのですが,今後,どのような対応を行えば良いでしょうか。不倫が事実であった場合,懲戒処分を行うことはできますか。
A 不倫の噂があるが詳細は不明とのことですので,まずは調査を行って事実関係を確かめる必要があります。
調査といっても,従業員の交際関係はあくまでプライベートですので,実際は当該従業員から任意で事情を尋ねるという程度になるかと思います。
不倫が事実であった場合,不倫相手が社内の人間か社外の人間かで,対応が変わる場合があります。
前提として,従業員の職場外での私的行為(プライベート)については,原則として懲戒処分の対象外です。
ただし,企業秩序に影響を与えるような場合には,例外的に懲戒処分の対象となり得ると考えられています。
不倫は,配偶者に対する不法行為という民事上は違法な行為であり,反倫理的な行為でもあります。しかし,あくまで従業員のプライベートであるため,不倫相手が職場内にいたとしても,原則として企業秩序の維持には影響がなく,したがって懲戒処分の対象とはならないといえます。
例外的に,不倫していることを職場内で話すなど,職場内の規律を乱すような場合やセクシャルハラスメントに該当するような場合には,懲戒処分もあり得るといえます。
不倫相手が取引先の場合には,企業秩序違反の程度は社内より高いといえます。特に,取引に悪影響を及ぼしているような場合は,懲戒処分も視野に入れるという判断もあり得ると思われます。
一方,不倫相手が取引先とは関係ない,単なる社外の人間である場合には,完全なプライベートであり,企業秩序の維持には影響がなく,したがって懲戒処分の対象とはならないでしょう。
実務上は,不倫相手が社内にいるまたは取引先であったとしても,懲戒処分を検討するのではなく,配転等の人事異動で対応することが適切であるといえます。この際,プライベートに対する過度の介入とならないよう,単に「職場内不倫(もしくは不倫相手が取引先)だから異動させます」だけでなく,配転を行う業務上の必要性があること及びその理由について,従業員に十分に説明できるようにしておく必要があります。
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