労働相談12:社員旅行積立金への対応

Q 当社では,任意団体である親睦会が,従業員から給料天引きの形で社員旅行積立金を控除して,毎年行われる社員旅行費用に利用しています。社員旅行に参加するかは社員の自由で,社員の大半が参加していますが,家庭の事情などで参加しない社員もいます。親睦会の会則では,参加しない社員に対しても,返金しないと規定されています。しかし,予め参加しないことが決まっている従業員から,「はじめから参加しないことが明らかなのに,天引きされた親睦会費が返金されないのはおかしい」との意見が出されています。どのように対応するべきでしょうか。

A まず前提として,会社が従業員の給与から社内旅行積立金を天引きしようとした場合,強制貯蓄の禁止を定めた労基法18条の制限があります。

 しかし,親睦会など,会社とは異なる組織や団体が社員旅行積立金を給与から天引きするのであれば,労基法18条の適用はありません。ただ,ここでいう「親睦会」とは,単に会社と異なる名称であるというだけではなく,その実態としても,会社とは異なる組織や団体である必要があることに注意が必要です。

 例えば,親睦会の運営が事実上会社の一存で行われていたり,親睦会の会計と会社の会計が混同していたりすると,親睦会イコール会社と判断されてしまうおそれがあるため,注意が必要です。

 また,従業員が必ず加入しなければならないというような強制加入の団体であれば,やはり労基法18条との抵触が問題となるおそれがあります。

更に,会社が給与から天引で親睦会費を積立てする場合,過半数代表者との間での労使協定を締結する必要があることにも注意が必要です(労基法24条1項)。

  これらの前提問題をクリアした上であれば,従業員が親睦会に対して支払った費用については,原則として親睦会の会則に従うこととなります。親睦会が会社と独立した組織である以上,会則をどのように定めるか又は改正するかは,親睦会が判断することとなります。

 そのため,親睦会の規定で「旅行に行かなかった場合にも積立金を返金しない」と定めれば,返金不要であることが原則です。

    しかし,旅行積立金はその名前の通り従業員の社内旅行に使うことを目的としていることから,旅行に行かなかった従業員に返金しなければ不公平な印象があります。また,そもそも,会則の内容を従業員が知らないことも多いことから,たとえ会則の定めがあったとしても,旅行に行かなかった従業員に旅行積立金を返金しないことは望ましい対応であるとはいえないでしょう。仮に裁判で争われた場合,具体的事情によっては会則が制限的に解釈されたり,あまりに不公平であるような場合は公序良俗違反として効力が否定される可能性もゼロとはいえないと思われます。

 そのため,旅行に行かなかった従業員との間では精算して返金するか,社内旅行に参加する人からのみ,その都度支払ってもらう等の対応が,トラブルを避けるためには望ましい対応といえるでしょう。

 なお,最近は若い世代を中心として社員旅行に消極的な傾向があります。また「社員旅行は事実上強制参加であったので,社員旅行の時間も労働時間である」などと後から争われて会社が万が一負けた場合には,賃金を支払わなければならなくなるというリスクもあります。

 そのため,そもそも社員旅行を止めたり,代替として会社負担で会食などにすることもあるようです。このような風潮を考えますと,旅行以外の方法で親睦を深めることも一案かと思います。

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