労働相談11:休日の試験受験は労働時間か

Q 当社では,業務に役立つ内容の民間の試験を従業員が受けて,資格を取得することを推奨しています。しかし,ある従業員から「試験を受けた時間は労働時間だから,その分の賃金を支払う必要があるのではないですか。」と主張されています。会社は従業員に対して,試験時間分の賃金を支払わなくてはならないでしょうか。

A 労働時間とは,「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」(三菱重工長崎造船所事件,最判H12.3.9)を指し,指揮命令下に置かれているかの判断は具体的ケースにより異なります。考慮要素としては,①時間的・場所的拘束性の有無,②強制力の程度,③業務との関連性などであり,これらを総合的に考慮して,指揮命令下に置かれているかを判断しています。

 そして,業務時間外の教育については,通達により「就業規則上の制裁等の不利益取扱による出席の強制がなく自由参加のものであれば,時間外労働にはならない」(昭和63.3.14基発150号)とされています。

 従いまして,試験の受験が労働者による自由参加であるのか,それとも会社からの強制であるものなのかで,必要な対応が異なることになります。

 労働者による自由参加であれば,試験時間は労働時間とはいえないため,労働者に対する賃金支払義務は発生しないことになります。

 一方,会社からの強制があれば,試験時間は労働時間となり,賃金支払義務が発生します。

 会社からの強制というのは,会社が業務命令として明確に指示した場合だけでなく,上記通達によれば「就業規則上の制裁等の不利益取扱」がある場合も含まれます。

 そして,ここでの「不利益取扱」とは,直接的なものだけではなく,間接的なものも含むと解されています。

 そのため,試験を受験しないことで制裁が科される場合のみならず,試験を受験しないことで査定においてマイナス評価とされる場合や,当該試験で得られる資格を有していることが昇進や地位の条件となっているなども「不利益取扱」に含まれるといえます。

 判断が難しいのは,試験を受験したことで査定においてプラスの評価がなされる場合です。この点について,受験した場合にプラスの評価がなされるのみで,受験しなかった従業員に対してマイナスの評価をつけるのでなければ「不利益取扱」ではないという考えもあり,一定の合理性があるといえそうです。

 従いまして,ご質問のケースでは,試験の受験が業務命令としてなされた場合や,試験を受験しないことで直接的・間接的に従業員が不利益となる場合には,試験時間は労働時間であることになり,その分の賃金を支払う必要があるということになります。

「労働相談11:休日の試験受験は労働時間か」の関連記事はこちら

returnTOP写真