労働相談10:退職勧奨を行う場合の注意点
Q ある労働者に退職勧奨を行うこととなり,人事担当である私が,面談の担当者となりました。当社では退職勧奨を行った前例があまりなく,私自身も面談を行うことは初めてです。退職勧奨の面談を行う場合の注意点などについて,簡単に教えて下さい
A 退職勧奨は,その名の通り,使用者が労働者に対して退職することを勧めるものであり,その方法に特に決まりがあるものではありません。
ただし,あくまで労働者が任意で退職届を提出する必要がありますので,労働者の自由意思が阻害されない方法や態様で行う必要があります。
また,いったんは退職に合意して退職届を提出した労働者が,後から思い直し,「退職届を提出するよう会社から強要された。」などと主張することもよくある話です。
そのため,後から争いになったときに備え,退職届提出を強要されたと主張されることがないようにする必要があります。
労働者の自由意志を阻害せず,退職届提出が強要であったと後から言われないようにするためには,面談者,時間,場所や回数について配慮する必要があります。具体的には,
1.面談者は1~2人
2.時間は30分~長くても1時間程度とし、就業時間中に行う
3.初回の面談は短時間(20~30分程度)
4.次回面談までの間に労働者が熟慮できるだけの期間を設ける
5.労働者が面談を止めたい旨を申し出た場合には中止する
6.面談の場所は、会社の施設内で行う
7.面談の回数は2~3回とする
ということが挙げられます。
また,面談の進め方としては,
8.客観的な事実に基づいて説得する
9.言葉使いや語調に注意する
ことが良いと思います。面談者としては,労働者に録音されているつもりで面談を行うくらいの心構えでちょうどいいかと思います。そして,後日の紛争に備え,
10.退職勧奨の方法や態様について、記録化しておく
ことも肝要です。
「労働相談10:退職勧奨を行う場合の注意点」の関連記事はこちら
- 労務問題の知識
- 解雇・雇止め
- 残業代対応
- 団体交渉・労組対策
- 労働審判
- 労働訴訟
- 女性労働者の雇用
- 高齢労働者の雇用に関する注意点
- 外国人の雇用について
- 「ハマキョウレックス事件」と「長澤運輸事件」の最高裁判決について
- 広島県における労働関係訴訟等の件数
- 労働相談1:試用期間中の能力不足判明
- 労働相談2:従業員が業務上の必要がないのに,勝手に残業しています
- 労働相談3:復職可能という主治医の診断書が提出されたら復職を認めないといけないでしょうか
- 労働相談4:パワハラの基準について教えてください
- 労働相談5:どのような行為がセクハラになるのか教えてください
- 労働相談6:インフルエンザに感染した従業員に対する自宅待機命令
- 労働相談7:遅刻や欠勤が多い社員への対応
- 労働相談8:使い込みへの対応
- 労働相談9:始末書を提出しない従業員への対応
- 労働相談10:退職勧奨を行う場合の注意点
- 労働相談11:休日の試験受験は労働時間か
- 労働相談12:社員旅行積立金への対応
- 労働相談13:減給処分の具体例
- 労働相談14:SNSトラブル対応
- 労働相談15:副業・兼業について・パート1
- 労働相談16:副業・兼業について・パート2
- 労働相談17:会社のホームページ作成
- 労働相談18:「解雇」の種類について
- 労働相談19:不倫をしている従業員への対応
- 労働相談20:能力不足を理由とした解雇1
- 労働相談21:能力不足を理由とした解雇2
- 労働相談22:契約書チェック1
- 労働相談23:契約書チェック2
- 労働相談24:訴状が届いたら