労働相談6:インフルエンザに感染した従業員に対する自宅待機命令

Q インフルエンザやノロウイルスに感染しているのに「仕事が終わらないから」と言ってマスクをして出社する従業員がいます。

周囲に感染しても困るので,出勤せずに自宅で休養するよう説得したのですが,言うことを聞きません。

強制的に出勤を禁止する方法はないでしょうか。

 

A まず,就業禁止について法律上規定されている病気であれば,法律に基づいて自宅待機を命じることができます。

例えば,新型インフルエンザであれば,「飲食物の製造・販売・調製又は取扱いの際に飲食物に直接接触する業務及び接客業その他の多数の者に接触する業務」について,知事が就業禁止を命じることができる旨が規定されているため(感染症予防法18条2項,感染症予防法施行規則11条2項3号),会社が就業制限を命じることも合理的であると考えられています。

しかし,季節性インフルエンザとノロウイルスについては,感染症予防法にもその他の法律にも,就業禁止についての規定はありません。

従って,法律に基づいた就業禁止命令はできないことになります。

もっとも,就業規則に,感染性の高い疾病に罹患した場合に就業を禁止することができる旨が規定されていた場合には,就業規則に基づいて就業禁止を命じることができます。

就業規則の規定がない場合には,自宅待機命令はできないのかが問題となります。

ここで,前提として,労働者は使用者に対して労働契約に従って労務を提供する義務がありますが,労働に従事することを請求する権利は原則としてありません。そして,感染性が高く,感染した場合には長期化・重症化するおそれもある季節性インフルエンザやノロウイルスに罹患した従業員を,周囲や取引先への感染防止という目的のために就業を禁止することは,合理的な目的があるといえます。

そのため,就業規則の規定がなかったとしても,会社が労働者に対して自宅待機命令を行うこと自体は可能といえます。

法律で就業制限が規定されていない病気について,就業規則の規定がない場合に自宅待機命令を出した場合に賃金や休業手当を支払うべきかについては,考えが分かれており,会社によって対応が異なるというのが現状のようです。

1つの考えとして,従業員が季節性インフルエンザやノロウイルスに罹患したというのは,「会社の責めに帰すべき事由」ではないので賃金全額を支払う必要はないものの,法律上は就業制限が規定されていないにもかかわらず,周囲や取引先への感染防止という目的のため会社の判断で従業員を休業させたといえるため,平均賃金の6割である休業手当については支払わなくてはならない,という対応が合理的であるように思います。

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