労働相談4:パワハラの基準について教えてください

Q 近年問題となっているパワハラについて,当社でもコンプライアンス上の観点から厳正に対応しようと思っているのですが,何がパワハラであるのかが良く分からないので,教えて下さい。

 

A パワハラは「パワーハラスメント」の略語です。パワーとは権力,ハラスメントとは嫌がらせを意味することから,「パワーハラスメント」を単純に翻訳すると,「権力を背景として嫌がらせを行うこと」を指すことになります。

パワーハラスメントの定義について直接規定した法律というものはありませんが,厚生労働省の平成24年「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」において「同じ職場で働く者に対して,職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に,業務の適性な範囲を超えて,精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義づけされている点が参考になると思われます。

パワハラというと,上司から部下に対する行為であるという印象が強いかと思いますが,この提言に従うと,同僚間や部下から上司に対する行為も含まれることとなりますので,注意が必要です。

提言では以下の6類型がパワハラの類型として挙げられています。

(1) 暴行・傷害(身体的な攻撃)

(2) 脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)

(3) 隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)

(4) 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制,仕事の妨害(過大な要求)

(5) 業務上の合理性なく,能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)

(6) 私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)

上記6つの類型がパワハラの全てであるということではありませんが,パワハラに該当し得るかの判断の際には参考になると思われます。

提言では,このうち(1)については業務の遂行に関係するものであっても,「業務の適性な範囲」に含まれるとすることはできず,(2)(3)については業務の遂行に必要な行為であるとは通常想定できないことから,原則として「業務の適正な範囲」を超えると考えられていると述べています。

そして,(4)から(6)については,業務上の適正な指導との線引きが必ずしも容易でない場合があると考えられ,具体的な判断については,行為が行われた状況や行為が継続的であるかどうかによっても左右されると提言では述べています。

パワーハラスメントに該当する場合,加害者には民法上の不法行為責任が発生し,被害者から損害賠償請求がなされるおそれがあります。

パワハラが不法行為に該当するかの判断基準については,裁判例では「企業組織もしくは職務上の指揮命令関係にある上司等が,職務を遂行する過程において,部下に対して,職務上の地位・権限を逸脱・濫用し,社会通念に照らし客観的な見地からみて,通常人が許容し得る範囲を著しく超えるような有形・無形の圧力を加える行為」を行った場合には,被害者の人格権を侵害したとして不法行為を構成すると判示しています(ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル事件,東京高判H25.2.27)。

従いまして,提言でパワハラの類型として挙げられた6類型に該当する行為や,上記裁判例の基準に該当するような行為が会社内で行われた場合には,行為が行われた具体的状況や当事者の人間関係を調査した上で,パワハラに該当するかを判断することになります。

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