労務問題の知識

一言で労務問題といっても、その内容は様々です。

「法改正に合わせて就業規則を改正したい。」、「ワーク・ライフ・バランスを達成できるような仕組みと規則を新しく作成したい。」というような会社組織に関する内容から、「問題社員を解雇したいが、解雇した後で問題にならないか。」など発生している問題に会社内で対応する必要がある場合、更に「辞めた従業員から残業代請求の訴状が届いてしまった。」など従業員からの請求や要求に対して会社が受動的な立場で対応する必要がある場合などです。

 

また、労務問題は、近年頻繁に改正される労働法規の改正にその都度対応していく必要があることや、社会情勢の変化に対応することから、日々新しい問題点が生じていく分野であるといえます。

後者の一例としては、いわゆる「新型うつ」の従業員への対応、SNSによりトラブルを生じた従業員への対応、多様化するハラスメント問題、高齢化社会による介護休暇取得者の増加見込み等が挙げられます。

 

労務問題の内容により、様々な方法での対応が考えられます。

まずは、就業規則改正や規則を新たに作成する場合には、基本的に会社の担当部署において行うことになるでしょう。ただし、その内容によっては従業員の同意を得るなどの手続が必要になる場合があります。また、民法や労働法規と異なる定めをしたとしても無効となってしまう内容もありますので、注意が必要です。

会社内で発生している問題に対応する必要がある場合、内容にもよりますが、問題社員に対してや就業規則や法律の定めに従って対応するということになるでしょう。

例えば、「問題社員を懲戒解雇したい」というのであれば、当該社員の問題行動が就業規則に定められた懲戒解雇事由に該当するかを検討し、該当するようであれば解雇手続を行うという流れになります。

ここで大切なのは、懲戒解雇できるか否かのチェックだけでなく、解雇した場合の会社のリスクを正しく把握しておくことです。

現在の日本の労働法規では、労働者の権利が厚く保護されています。とりわけ、解雇というのは、労働者が日々の糧を得る手段を強制的に失わせるもので、労働者とその家族の生活を根底から揺るがすものであるため、判例によって厳格に制限されているのが現状です。

そのため、懲戒解雇した従業員から、解雇は無効であるとして裁判で争われた場合に備え、会社としては懲戒解雇が相当であると裁判所に認めてもらえるように証拠を揃えておくなどの準備を予め行った上で解雇手続を行う必要があります。

また、懲戒解雇はリスクが高いために懲戒解雇以外の方法を政策的に取るという判断も、企業活動の中では合理的な選択肢といえます。

 

従業員からの請求や要求に対して会社が受動的な立場で対応する必要がある場合、内容にもよりますが、早期の対応が必要になる場合があります。

例えば、会社と労働者との間の労働問題を解決するための裁判所の手続の1つとして、労働審判という制度があります。これは、通常の訴訟であれば解決まで1年以上かかってしまうところを、原則として3回以内の期日で結論を出す制度です。

労働問題をスムーズに解決できるという点で、会社と労働者の双方にとって便宜な制度ですが、逆に言うと、会社として行うべき準備を第1回期日までに行う必要があることになります。

具体的には、第1回期日までに十分な証拠を揃えて主張を組み立て、それを裁判所に対して説得力を持った書面を作成して提出する必要があります。

ところが、労働審判申立書が会社に届いた段階で第1回期日は裁判所により決められていることが通常です。労働審判の第1回期日は、労働審判申立から40日以内の日に原則として指定されると労働審判規則に定められていますが、一般的には1ヶ月くらい後の日時が指定されています。

しかも、第1回期日の1週間くらい前には、裁判所に対して会社の主張した書面と証拠を裁判所に提出する必要があることが通常です。

つまり、会社の準備期間は最大でも3週間、申立書を読んで会社内で方針を決定する時間や、裁判所に書面を提出する前に会社内での決済手続が必要な場合はその時間も考慮すると、事実上は1~2週間程度しかないと言っても過言ではありません。

労働審判を申し立てた従業員は、場合によっては何ヶ月も前から弁護士と打ち合わせを行うなど時間をかけて入念に準備して申し立てを行っているのに対し、申し立てられた側の会社は1~2週間程度の間に従業員からの主張書面と証拠を熟読し、会社内にある証拠を探し、会社の主張を組み立て、裁判所に対して説得力を持った書面を作成して提出する必要があるのです。

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